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2021-05-11

今月の俳句「四月」2021

コーヒーメーカーの絵

点字撃つ ゴミカレンダーの四月から

日々持ち込まれる回覧板の中で最も重要なお知らせはゴミカレンダーだと言ってもいいだろう。
これなしではいつどんなゴミを出してよいのかわからない。
さっそくヘルパーさんに読んでもらいながら点字で書き留める。
点字のタイプは続けると肩がこってくるので とりあえず半年分を点字で書き写して続きはまたしばらくしてからということになった。

 

 

囀りと コーヒーメーカーの 呟きと

風光る 緑の羽の 回覧板

赤い羽根は社会福祉のための寄付として昔から知られているが、緑の羽根が出てきたのはいつごろのことなのだろう。

 

 

旅人の 手に春コート お日様笑う

イソップ童話で有名な お日様と北風の競争も 四月に入ると 大分北風が不利になってくるようだ。

 

 

天井の 青天井の 春の星

青天井とは 青空のことを天井になまぞらえて呼んだもの。
どこか突き抜けた解放感を表現していることばのように感じられる。
私がこのことばを知ったのは紀野 一義の「法華経の風光」という本からだった。
ベッドにごろんと横になって天井を見上げる。
この天井の先には青天井があり、さらにその先には漆黒の宇宙空間と星が輝いているのだ。

 

 

初めての ぼんかんの甘 恐れいる

生協の柑橘系のラインナップの中でこれまで試してこなかったものを今回初めて取り寄せてみた。
ぼんかんというグレープフルーツのような大きな柑橘系のくだものなのだが、
ぼんかんというどこか とぼけたお坊さんのような名前にも弾かれて注文したのだが、
夕食後に種を取り、短冊形に切ってもらったものをいただいた。
けっこう種があるのよねと言っていた。
口に入れるとなつみかんのような粒つぶ感があって 独特の酸味が伝わってくる。
そのすっぱさに身構えながら食べていくとかわに近いところに甘さがひかえていて それが口中に広がる。
これはこれはと思った。どこか高級感を感じさせる味覚であった。
行ったことはないが、高級料亭のデザートに出してもおかしくないようなフルーツだと思った。

 

 

春夜中 猫の声して 赤子泣く

四月のある日の真夜中 風を引き裂くようなあるいは風が泣いているような声にはっとして目覚めた。
ベッドの中で耳を澄ませる。猫が鳴いているのかと思った。
そんな季節でもある。しかし少ししてそれが赤ん坊の泣き声だとしれた。
そういえばとおりをはさんだ少し奥まった家で年末にあたらしい命の誕生があったことを思い出した。

 

 

大魔神のごと 春の夜明けの 通り雨

それはどこからともなく 現れて 数分後には どこかへ立ち去っていく。
夜明け間近の薄暗いじかんとなれば それはいっそうの存在感を持って迫って来る。
大きなものが雨音と共に近づいてくる、全ての風景を包み込み足音もかき消して。
その音にベッドの中から耳をすましていると やがて通り雨は立ち去って静かな空気が戻って来た。

 

 

春嵐 夜に隠れし 鳥獣(とりけもの)

ドッペルゲンガーは 夜にさまよい 春嵐

なんだか今月は週末旅に春嵐が来ているみたいな気がする。
海と陸との最前線にあるこの海辺の家は風も強く雨と波の音が家を包んでいる。
それでも雨風から身を守ってくれる家の存在はなんとありがたいことか。
サンクチュアリということばが思い浮かぶ。外界からの脅威からのがれ 安全な場所へ非難して来た者を保護してくれる空間だ。
そんな風に思うのも海に間近な場所に家があるせいかもしれない。
でも鳥や獣たちはこんなときにどうしているのだろうといつも思う。
木陰や建物の陰に隠れて風雨をやりすごしているのだろうか。
ガラス越しに漆黒の風景をながめていると自分だけが安全で暖かな空間に守られていることに不思議なうしろめたさのようなものを感じさせられる。
まるで嵐が丘に出てくる男のようにこの嵐の夜にあてもなく歩き回っている人がいるような気がして。
そしてそれはまた自分の分身、ドッペルゲンガーのようだったりしてと闇が妄想を膨らませるのだ。

※ドッペルゲンガーとは、超常現象の一種。
 自分とそっくりの姿をした分身。
 同じ人物が同時に別の場所(複数の場合もある)に姿を現す現象を指すこともある。
 それを本人や第三者か目撃していることもあるのだという。


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