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2020-05-31

今月の俳句「五月」2020

金魚すくいの絵

 

机上の風 紙馬となる  端午かな

端午は五節句の一つで五月五日の節句をいう。
端午の端は始め、午は数字の五で 五月最初の五日という意味である。午は馬を表わしている。
そのことばから 机上に風が吹いたと思ったら それが紙の馬となって机上を走り出すという幻陰陽師(おんみょうじ)の安倍晴明がやりそうな術が浮かんできた。

 

柏戸といふ 横綱がおって 柏餅

第47代横綱・柏戸剛。
立ち合い一気の押しで相手を圧倒する取り口で、大横綱大鵬と互角に渡り合い、
柏鵬(はくほう)時代という大相撲の黄金期を築いた。

 

遠雷に 祭り浴衣や 初鰹

初鰹の句といえば
目には青葉 山ほととぎす 初鰹 という句で決まりである。
江戸中期の俳人・山口素堂(1642~1716)の作。
目にも鮮やかな「青葉」、美しい鳴き声の「ほととぎす」、食べておいしい「初鰹」と、春から夏にかけ、江戸の人々が最も好んだものを俳句に詠んでいる。
この句が一躍有名となり、江戸っ子の間では、初夏に出回る「初鰹」を食べるのが粋の証になったともいう。
ところでこの俳句、実は俳句作法の点からいうと、問題の句でもある。
一般には俳句に入れる季語は一つまでが望ましく、二つ以上の季語が入ると、季がさねといって嫌われる。
ところがこの句は季語の三段重ねである。
青葉、ほととぎす、初鰹はいずれも夏の季語である。
にもかかわらずこの句が名句であるのはその使い方にあるだろう。
青葉は視覚に訴えている。ほととぎすは聴覚に、もちろん初鰹は味覚である。
今回 わたしもそれに習って作ってみた。

 

つる薔薇から 始めてみたし 通学路

田園の 草草(くさぐさ)和して 青嵐(あおあらし)

青嵐(あおあらし)とは 青葉のころに吹き渡るやや強い南風のことをいう。
この句には二重の意味がある。一つは実景としての田園に吹き渡る強い南風の風景を表現したものだが、
もう一つは ベートーベンの交響曲第六番 「田園」のことをいっている。
ある人がこの交響曲を聞くと、音楽で森林浴をしたような気持ちになると言っていたが まさにそのとおりだと実感させられる。

窓を越え みなつながりし 春の宵

五月にはいると思いがけなく陽気が好転して開放的な日が訪れることがある。
窓によって家の内外の空気がはっきりと区切られていた日々から 窓を越えて空気がひとつながりになっていくのを感じる。
夜であればなおさらそんな気分になる。

 

くすだまや 小惑星で  はじけおり

小惑星の探査ロケット 「はやぶさ」の成功を祝って 句のような光景のイメージがふとわいてきた。
くすだまは夏の季語、現在ではパーティグッズとして場を盛り上げたりするのに使われるが、もともとは端午の節句に用いられた。
各種の薬を袋に入れ、よもぎ しょうぶ 造花などを加え、五色の意図を垂らしたもの。
柱などにかけ、邪気はらいに使われた。

 

回覧板 鯵干してある 奥の家

風鈴の 金魚が三匹(さんび) 猫の番

朝曇り 楽屋のごとき小庭かな

ある朝曇りの日、ゴミ出しのために玄関の戸を開けて家の前庭に出た。
通りにでようとして何かいつもと違う感覚に捕らわれた。
通りが表舞台で前庭が楽屋のように感じられたのだった。
前庭は小さな庭で鉢植えや流しや椅子などが狭いスペイスに雑然と置かれていて、天井の低い朝曇りの中でまるでそこが楽屋のように感じられたのかもしれない。

 

 


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